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LROと米国宇宙政策

Tag: 宇宙admin @ 6:56 AM

今年の10月28日打ち上げ予定の月探査機「ルナ・リコナイサンス・オービタ」に、名前を載せてくれるキャンペーンが行われている。

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しかし、ここ数年の月探査に対するNASAの豹変ぶりは面白い。ほんの数年前まで、「月は日本や欧州が好きにしてもいい、我々は火星に行くから」と言って憚らなかったし、現にアポロ計画以降、月探査機もろくに打ち上げてはいなかったのだ。

それが、ブッシュ大統領が2004年に「新宇宙政策」を発表したあたりから変わり始めた。これは「アメリカは人間を再び月に送り込み、そこを足がかりに火星へ、そしてその先を目指す」というもので、当然多くの、特に科学者からの批判があり、今でも根気強くネガティブキャンペーンを張っている。月に人間を送り込んでも、それにつぎ込んだ予算に見合うだけの科学的に有益なデータが得られるわけがない事はアポロ計画が証明しているし、また他の計画へ悪影響が出る事は確実だからだ。

この新宇宙政策では、他にもスペースシャトルを2010年に引退させる、その後は新型宇宙船を就航させるといった事も盛り込まれており、現に今、 NASAでは「コンステレーション・プログラム」の名の下、開発が進められている。新型宇宙船は「オリオン」と名づけられ、それを打ち上げるロケットは「アレスI」、また「アレスV」という貨物専用の大型ロケットを開発する事も決まった。
だが、シャトル引退からオライオンの就航までには、少なくとも5年のブランクが発生し、有能な人材が流出してしまうのではとか、アメリカは国際宇宙ステーション(ISS)を中途半端に放り出すつもりではなど、批判は後を絶たない。

この新宇宙政策が今後変わるとしたら、それは今年の大統領選ぐらいしか無い。珍しい事に、今回の選挙は宇宙政策に関する発言が比較的多い。例えば共和党のジュリアーニ候補(マケイン支持に回ったが)は新宇宙政策の継続を明言し、マケイン候補もブッシュ大統領の新宇宙政策を全面的に踏襲すると明言している。まぁ、同じ党の現職大統領が言い出した事を批判は出来ないだろう。
一方で、民主党のオバマ候補はコンステレーション・プログラムを遅らせ、その分の予算を他計画に回すと表明している。もっとも、後に「月や火星に行くのを遅らせるのであって、オリオンやアレス自体の完成は最優先させ、もちろんISSも完成させる」と付け加えている。また、クリントン候補はブッシュのこれまでの宇宙科学政策を厳しく批判し、立て直すと共に、こちらもオリオン/アレスの開発を最優先させ、特にシャトルからオリオンへの転換点において、有能な技術者が流出しないように努めると明言している。

そもそもブッシュの新宇宙政策には色々と無理が多い。大方の見方は、近い将来中止されるか、良くても大幅に遅れるか、という具合である。大統領が代われば、どんな形であれ、アメリカの宇宙政策は見直される事は間違いない。

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